「お母さん、ルディーンが動かなくなっちゃったよ」
「あらあら、また何かを思いついたみたいね」
キャリーナに言われてルディーンを見てみると、確かに細かくした大豆を見ながら固まっているみたいね。
あの様子からすると、何やら新しい事を思いついたみたいだけど……。
う〜ん、いろいろと新しい物を作ってくれるのはうれしいんだけど、こうなると声を掛けても反応が無くなってしまうから困ってしまうわ。
「え〜、また?」
「こうなってしまうと、いくら声を掛けても無駄ですもの。レーア、キャリーナ。ルディーンの考えがまとまるまでの間に、この大豆っていうのをすり鉢ですっておきましょう」
「そうだね。そうしておけばルディーンが動き出した時、すぐにお菓子作りを始められるもの」
「ルディーン、私より小っちゃいのに、なんでいっつも難しい事考え始めちゃうのかなぁ。私、早く甘いお菓子が食べたかったのに」
今までにも何度かこんな事があったけど、待っていればじきに動き出すのは解っているもの。
だから私たちは、ルディーンの考えがまとまったらすぐに動き出せるよう、魔法で細かくなった大豆をすり鉢に移して3人で粉にする作業を始めたのだった。
「石臼はダメだよね。だってお家に置いとくにはちょっとおっきすぎるもん」
粉にするって言ったら一番最初に思いつくのは石臼なんだけど、あれって重たい石と石の間に粉にしたいものを入れてゴリゴリやる道具だから動かすのにすっごく力がいるんだよね。
だから僕やお母さんだとするのが大変だし、もし魔道具として作ろうと思ったら結構おっきな魔石を使わないとダメなんだよね。
「村長さんから、魔道リキッドをあんまりいっぱい使っちゃダメって言われてるんだっけ」
おっきな魔力を魔石から出そうと思ったら、それだけいっぱい魔道リキッドがいるもん。
だから石臼を回転の魔道具で動かすのはダメなんだ。
それにね、石臼ってすっごくおっきいんだよね。
その上石で作ってあるから、とっても重たいでしょ?
邪魔だなぁって思っても動かせないから、もし作ったらお母さん、きっと困っちゃうんじゃないかなぁ。
「って事は、他になんか粉にできる道具を考えないとダメなんだけど……」
実はね、なんとなくなんだけど、僕、そういう道具を知ってる気がするんだ。
「僕んちにはそんなのないし、イーノックカウのお家にもそんなのなかったよね?」
って事は錬金術ギルドで見たのかなぁ?
でもあそこにもそんな道具、無かったんだよね。
そう思った僕は、どこで見たのかなぁって頭をこてんって倒したんだよ。
そしたらさ、台所のふちっこに置いてあった魔道冷蔵庫が目に入ったんだ。
「そっか! 僕んちやイーノックカウじゃなくって、もしかしたら前の世界の僕んちにあったのかも?」
あの魔道冷蔵庫も、前の世界にあったのを知ってたから作れたでしょ?
だったらさ、もしかすると大豆を粉にする道具も前の世界の僕んちにあったのかも?
そう思った僕は、一生懸命思い出そうとしたんだよ。
でも前の世界のお家だと小麦粉とかはみんなお店屋さんで買ってたはずだから、そんなのがお家の中にあるはずないんだよね。
「う〜ん、やっぱりイーノックカウのどっかで見たのかなぁ?」
そうなるとやっぱりイーノックカウのどっかで見たって事になるんだけど……何かを粉にするとこなんて、どっかで見たっけ?
「露店なんかでそんなのやってるはずないし、粉を使うとこって言うとお菓子屋さんだけど、アマンダさんははじめっから粉になってる小麦を使ってたよね?」
僕はね、どこで見たのかを思い出そうと思って、一生懸命考えたんだ。
粉にしてるとこ……大豆や小麦を粉にしてるとこ……硬い豆を粉にしてるとこ……って、あれ?
「そう言えば僕、硬い豆をふかふかな粉にするところなら見た事あるじゃないか!」
あのね、前の世界のお家ではコーヒーっていう、黒くて苦い飲み物をみんなが飲んでたんだ。
でね、そのコーヒーってのは、真黒になるまで焼いた硬い豆を粉になるまで挽いて、それにお湯をかけて作るんだよね。
「そっか。僕が見た事があったのって、コーヒーを作る道具についてた豆を粉にする道具だったのか」
コーヒーの豆を粉にする道具だったら、僕、どんなのだったかよく覚えてるんだよね。
何でかって言うと、粉にする時にガーって言う音がするのが楽しくって、前の僕が今の僕くらいちっちゃい時に毎回やらしてもらってたらなんだ。
じゃあそれがどんなのだったかって言うと、三角形の羽が4枚、お花みたいに開いた感じでちっちゃな入れもんの中についてる道具でね、それがすっごく早く回るんだよね。
そしたら入れ物の中に入れたすっごく硬いコーヒー豆が、あっと言う間にふかふかの粉になっちゃうんだよ。
すごいよね。
「大豆もコーヒー豆と一緒ですっごく硬いもん。おんなじように作ったらきっと、ふかふかの粉になるんじゃないかなぁ?」
僕、鋼の玉をいっつもポシェットに入れて持ち歩いてるから、あのお花が開いたとこみたいな形の刃はそれで作ればいいでしょ?
それにそれを回す回転の魔道具は、今まで何度も作ってるから何も見なくったって作れちゃうんだよね。
「後は入れもんだけど、それは銅板かなんかで作ればいいかなぁ? 木や石で作ると、粉にする時に傷がついたり割れちゃったりするかもしれないし」
硬い豆を粉にする時って、ガーってすっごい音がしてたんだよね。
って事はさ、粉になるまでは入れもんの中を硬い豆がすっごく動き回ってたって事だもん。
だったらもし木で作ったら傷だらけになっちゃうだろうし、石で作ると欠けちゃったりするかもしれないよね?
でも銅で作った入れもんだったらそんな心配しなくってもいいし、粉になった後も刷毛で簡単に取り出せると思うんだ。
「うん、回すのはちっちゃい鋼の刃だからちっちゃい魔石でも作れちゃうし、魔道リキッドもあんまり使わないからお父さんもきっとダメって言わないよね?」
これなら大豆を粉にする事ができそうだなって思った僕は、それじゃあすぐに作業部屋に行って魔道具を作んなきゃってふんすと気合を入れたんだよ。
でもね、
「あら、ルディーン。考え事は終わったの? 大豆の粒なら、ルディーンが考え事をしている間に粉にしておいたわよ」
「お母さんとキャリーナと3人で頑張ったんだから。でもこれならすぐにお菓子が作れるでしょ?」
「みんなルディーンの事を待ってたんだよ? 早く甘いお菓子、作って」
僕が大豆を粉にする魔道具の事を考えてるうちに、お母さんとお姉ちゃんたちが僕間が魔法で細かくした大豆の粒を粉にしてくれてたみたいなんだ。
だから、粉にする魔道具は後回し。
キャリーナ姉ちゃんも早く早くって言ってるから、僕はみんなが作ってくれた大豆の粉でお菓子を作る事にしたんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
大豆を粉にする魔道具ですが、最初はフードプロセッサー的なものを考えていたんですよ。
でもよく考えると、あれって小魚や鰹節を振りかけにできるくらいで、硬いものを粉にするには向かない事に気がつきまして。
それじゃあ、硬いものを粉にするのは何かと考えた結果、コーヒーミルにたどり着いたと言う訳です。
ルディーン君も言っていますが、硬い豆を粉にすると言う点では同じですからね。
さて、まだ正確な日にちは決まっていないのですが、どうやら今週は何日か出張が入るようなんですよね。
そうなるとその準備もしなければいけないので、各時間が取れない可能性が高いです。
そんな訳ですのですみませんが金曜日の更新はお休みさせていただき、次回更新は来週の月曜日になります。